太宰浪漫譚

彼の声は世界を変える。
それだけですべてを呼び戻すのだから。



「それは恋ではないのか?」
「恋である筈がないだろう。」
「まあ、太宰も男色を題材としているから、おかしくはないね。」
「いや、違う。そうではないのだ。彼には何ともいえぬ魅力があるのだ。」


これは太宰治に憧れる青年の物語だ。
しかし、僕はその当人ではない。
太宰に憧れる彼に、また、憧れる男だ。


彼、伊倉草蔵は不思議な魅力を持つ男であった。


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