youmay2007-08-01

という訳で、安部公房を読み返しています。今更だけど、話のシュール具合にどうも心を奪われがちだけど、文章がとてもいいんですね。詩歌の様。発見して、新鮮で、2度美味しい。

いつもどおりの朝になるはずだった。
上体を右に傾け、ひろげた新聞の隅に肘をつき、レバーとセロリのペーストを厚塗りにした堅焼のローストを噛じる。見出しの活字の上で石蹴りふうにジャンプしながら、苦味を利かせたコーヒーで口のなかを流してやる。健康のために、小粒のトマトを三個まとめてかみ潰す。

で、始まる カンガルー・ノートです。

ある朝突然、〈かいわれ大根〉が脛に自生していた男。訪れた医院で、麻酔を打たれ意識を失くした彼は、目覚めるとベッドに括り付けられていた。硫黄温泉行きを医者から宣告された彼を載せ、生命維持装置付きのベッドは、滑らかに動き出した…。坑道から運河へ、賽の河原から共同病室へ―果てなき冥府巡りの末に彼が辿り着いた先とは。
急逝が惜しまれる国際的作家の最後の長編。

実際は、こんな話。